The Whoと四重人格

1997年夏

 先日モントリオールでザ・フーのコンサートがあり、レコードコレクターズ1996年9月号のザ・フー特集を思い出しました。今回の内容は特集されていたトミーではなく、昨年6-7月のコンサート同様"四重人格"のライブでの実演という形式のものでしたが、ザ・フーのライブなど二度と見られないだろうとあきらめていた私にとっては思いがけないラッキーな体験となりました。あの時の特集号の記事でも、ピート・タウンゼンドはもう既に他のメンバーとフーを再結成する意欲はなさそうだとありましたので、この時の感動を是非日本のファンの方々にもお伝えしなければと思い、思わず筆を取りました(と言ってもコンピューターですが..)。
 今回のライブは曲間に映像で物語の主人公が語りべのように登場し、ロックオペラと映画をミックスしたような形式で進行していく趣向となっていました。そのため、折角激しい演奏で盛り上がってもその映画の部分で観客は一息入れて座席に座ってしまうという、ロックコンサートとしてはその趣向がむしろ歯がゆい感もありましたが、演奏自体は年齢を感じさせない熱の入りようでした。ピート・タウンゼンドも最初はサングラスで登場したものの、興がのってくるとそれをはずしてツバを飛ばしながら歌いまくり、最後の方ではシャツのボタンが総てはずれてしまうほどの熱演でした。主にはアコースティックギターでの演奏でしたが、所々でエレキギターに持ち変えて決めのポーズをするなど、映像で見覚えのある昔の姿が思い出され、ファンにとってはこたえられないライブでした。ジャンプがほとんど見られなかったのは少し残念でしたが..。
 バンドの面々は、ザ・フーの三人にサイモン・タウンゼンドとザック・スターキーを加えた昨年の公演を元にした構成でしたが(この公演に関してはテレビの放映で見ただけなのですが)、この日一番盛り上がったのが、ジョン・エントウィッスルのとんでもない早引きのソロとピート・タウンゼンドが激しく盛り上げていったところで、やはり見に来ていたのはほとんどがザ・フーをよく知っているファンなんだなと実感しました。隣の席の奴に"おまえは本当にフーを見に来たのか?フーを知っているのか?"と聞かれ、"もちろん"と答えたら急に嬉しそうに、肩を組まれたりしたものでした。前述のように、合間合間に映像が入るため、折角の盛り上がりに水を刺されるような感もなきにしもあらずでしたが、クライマックスからアンコールはさすがに観客総立ち状態で、年寄りなのにやってくれるぜと嬉しくなりました。
 久しぶりにいいコンサートを見たという高揚感がしばらく続きましたが、この夏のモントリオールは次々に見たいアーティストがやってくるので、長い冬を迎える前のひとときを暑く燃えようかと思っています。ちなみに予定ではリリス・フェアー(サラ・マクラクラン、メレディス・ブルックス、ジュエル等の女性アーティストが参加)、レイディオヘッド、デビッド・ボウイ等を見に行こうかと考えていますが、お金とも相談しなければなりませんので他のアーティストは見れるかどうかわかりません。

 一昨日行われたリリス・フェアーも大変素晴らしいものであったことを付記しておきます。日本でのサラ・マクラクランやジュエルの知名度はどの程度のものなのでしょうか?こちらでの盛り上がり方はなかなかすごいものがありました。